“So where the hell are you,Clark?”
Bruce Wayne
issue&TPB
BATMAN/SUPERMAN:FUTURES END #1
TPB
BATMAN/SUPERMAN(2013-2016) vol.4:Siege
あらすじ
スーパーマンのいない世界
物語は満身創痍のバットマン、ブルース・ウェインの独白で始まる。
(眼が開いたので、私は自分が生きていることを知った。
私は病院のベッドにいた。
アルフレッドが傍に座って、マクベスを読みながら病院の音楽に合わせてハミングしている。
それはすなわち、世界はあの戦争を生き抜いたということだ。
そう、それで…)
(君はいったいどこにいるんだ、クラーク)
ブルース・ウェインは病院のベッドの上で眼を覚ましました。
何十本という骨は折れ、満身創痍の状態だが、兎に角生きている。
そして窓の外に広がる世界は、巨大な災害にあったかのように建物が崩壊し、懸命に復興作業が行われている。
変貌した世界
幾日か過ぎ、身動きが取れるようになったブルースは、式典に参加していた。
被災者の死を悼み、行方不明者の帰りを待つ者たちによって開かれた式典だ。
黒衣を纏った多くの人々が、家族の写真を持ちながら悲しみに暮れている。
(我々は別の世界からの侵略を受けた)
(奴らを退けるだけで精一杯だった)
(何千もの死)
(さらに何千という消失)
司会が犠牲者の名前を一人一人読み上げる。
「クラーク・ケント」
その名が読み上げられると、ブルースのそばで嗚咽が上がった。
眼鏡をかけた青年の写真を抱き、涙を流す彼女たちを眺め、ブルースはひっそり、心の内で呟く。怒りを込めて
(おめでとうクラーク。君は彼女達の心を打ち砕いたぞ)
ブルースには確信があった。
(スーパーマンである君が死ぬはずはない)
(もっと悪いことが起きている)
スーパーマンが死ぬわけがない。であれば、彼がその姿を見せない理由は一つしか考えられない。スーパーマンが、クラークが自分の意思で、姿を隠しているのだ。
(君は我々を見捨てたのだ)
(君はこう思っているのかもな。もはや自分は人間に必要とされていないと)
二人のヒーロー
地道に回復していく町を見て回ったりと、日々を過ごすブルースの心を占めるのはスーパーマンのことばかりだった。
ある日、アルフレッドに車椅子を押してもらいながら、ブルースはバットケイブに降り立った。
背骨を負傷しているブルースは歩くのも難儀する有り様で、移動のほとんどに車椅子を使っている。
アルフレッドがいつものように皮肉交じりに、ブルースを留めようとする。
「すばらしいお考えとは思えませんね」
「1度でも私のアイディアをすばらしいと思ったことがあるか?」
「それもそうですね。ですが、どうか」
車椅子から無理矢理立ち上がったブルースが苦しげに呻くと、アルフレッドは思わず「ブルース!」と声を乱す。しかしブルースはやめようとしない。
「私は大丈夫だ。我々には時間がない。それに」
なんとか自分の足で立ったブルースは、そこに備えていた二足歩行型のロボットスーツに歩み寄ると、着込むようにして乗り込んだ。
「それに誰かがここを掃除しなければならないだろう?」
ブルースの目の前には、ハイテク機器も、恐竜の置物も、巨大なコインも、何もかもが破壊され尽くされたバットケイブの光景が広がっていた。
次々と残骸を持ち上げ、ケイブを掃除しながらも、ブルースの脳裏にはスーパーマンのことばかりが過る。
(クラーク。もし君がここにいれば、こんな掃除、すぐに終わるだろうな。心臓がいくつか脈打つ間に、何もかも元通りにできる。だが、君はまだ怒っているんだ、そうだろう?)
ブルースの意識が現在を離れ、6ヶ月前のあの日に遡っていく。
決別
バットケイブに激しい警告音が鳴り響く。
バットマンはモニターを確認するや悪態をつき、手元のスイッチを押す。
すると辺りに緑色に発光する物体が現れはじめた。
走り出しながら、バットマンはまだ見ぬ侵入者へ語りかけた。
「聞いているだろう、クラーク」
「こんなことをする必要は無い。話をしよう」
ブルースの現在の意識が、過去の自分の言葉を補足する。
(私はやるべきことをやったんだ。君だってわかっているだろう?)
(あれが唯一、戦争に勝つ方法だったんだ)
(君にはあの非情な選択をする覚悟はなかった)
辿り着いたケイブには、バットマンの予想通り、スーパーマンがいた。
バットマンの言葉など聞こえないかのように、怒りの唸り声をあげながら、スーパーマンは彼に襲いかかり…
(それが私が聞いた最後の君の声だ)
ブルースの意識は完全に現在に戻ってきた。
スーパーマンに破壊された物の残骸を焼却炉に放り込み、それらが跡形も無く溶けてなくなるのを、ブルースは眺める。
(私は謝罪をするつもりはないし、君に謝罪して欲しいとも思っていない)
(私は君を知っている、クラーク。そして私自身のことも、私は知っている)
(君はいつだって、我々二人には共通の目標があると信じたがっていた)
(だが私と君は違う)
(戦い方も、限界も)
クラークはブルースと自分をどこか同一視していたが、ブルースは自分が決してクラークの場所まで至らないことを知っていた。
そして、聖人のクラークにはできないある種のことを成しえてしまえることも、自覚していた。
今思えば、それは絶望的なすれ違いだったのだ…。
「ブルース」
アルフレッドの呼びかけに振り向くと、彼はケイブの巨大モニターを示していた。
「メタロです。あの核爆発を生き抜いたようですね」
スーパーマンの宿敵メタロ。
超人と互角に渡り合う強敵の一人であった。
人間がたやすく勝てる相手ではない。
モニターに映るその禍々しい姿を見上げ、ブルースはもう何度も何度も思ったことを、心中で再び呟く。
(世界にはまだスーパーマンが必要なんだぞ)
(君は、どこにいるんだ)
孤独の要塞へ
天才少年ヒロが作ってくれたパワードスーツを着て、バットマンはスーパーマンの秘密基地である「孤独の要塞」にやってきた。
目的は勿論、スーパーマンを見つけることだ。
孤独の要塞にはスーパーマンの愛犬、クリプトが残っていた。
野生のオオカミに混ざって肉を貪るクリプトにバットマンは近寄っていく。
「クリプト。私だ。カルを探しているんだ」
かつては共に戦ったこともあれば、撫でてやったこともある。
しかし、クリプトはバットマンのことを忘れたかのように、激しく襲いかかってきた。バットマンはアーマーの上から腕を噛まれてしまう。
しかしそんな一人と一匹の間に割り込んだ人物が。
それはスティールだった。
「スティール…ありがとう」
「何をしに来たんだバットマン」
礼を言うバットマンに、スティールは嫌悪も露わな態度を取り続ける。
「君はここに歓迎されない客人だ。わかっているだろうに」
「スーパーマンに知らせたいことがあるんだ」
「メタロのことか?」
バットマンが何を言っても、スティールの表情も態度も、冷たいままだ。
「スーパーマンが仮に生きていたとして、おまえの言葉を信じるとでも?」
「お前はもう、スーパーマンの全てを使い果たしたんだ、バットマン」
自分の始末は自分で付けろ。スティールに一刀両断され、バットマンは何も言い返せない…。
スーパーマンの安否については、スティールもあいまいな言い方しかしなかった。
結局バットマンは、スーパーマンを見つけることはできなかった。
何も得られず、その場を後にするしかなかった。
クリプトナイト
バットマンはスーパーマンを探し回るのをやめた。
計画を変更し、誘い出すことにしたのだ。
バットマンはクリプトナイトを大量に持って、テキサスにあるコムストック空軍跡地にやってきた。
クリプトナイトをよく見える場所に並べ、スーパーマンおびき寄せようという作戦だった。
仮にスーパーマンがこれに気づいたとしても、普通なら「こわ…近寄らんとこ…」ってなるというかぶっちゃけ近寄れないんじゃという気もするんですが、バットマン先輩まじめにやってるから…
これだけ大量のクリプトナイトが集めてあるのを見れば、スーパーマンも放置はしまい…。
そんな思惑を抱き、空を見上げるバットマン。
すると、空から光が近寄ってくる。
スーパーマンか…?
バットマンの予測は外れた。
スーパーマンではなく、クリプトナイトをエネルギーとするメタロをおびき寄せてしまったのだ。
バットマンが強化スーツを着ていても、スーパーマンさえ時に脅かす存在のメタロには敵わない。
叩き付けられ、殴り飛ばされ…強化スーツも意味をなさず、バットマンはボロボロになっていく。
しかしスーツの製造者であるヒロの遠距離からのサポートを受け、バットマンは辛くもメタロを倒すことに成功した。
バットマンの勝利に、ヒロが喝采を送る。
「やったねバットマン!俺たちって結構いいチームになれそうじゃんね?!
バットマン?」
ヒロに答える声はない。
「バットマン?バットマン!!」
きみはいない
(それから数週間後、私は眼を覚ました)
物語のはじまりと同じ…病院のベッドに横たわる、満身創痍のブルース…そしてその傍らにはアルフレッドが控えていた。
アルフレッドはブルースの背骨がまたも砕けている事実を皮肉気に伝えた。
そして、続けてこう言った。
「あなたの日記を見つけました。そこに書かれた…彼へあてた手紙を読みました」
散々スーちゃんどこ?どこにいるの?って言ってたあの独白は、どうやら全部日記に書いていたらしいブルース。そして寝ている間に、親同然のアルフに見られちゃったという。………見られちゃったの(震え)
ブルースは何も答えない。
黙したままのブルースに、アルフレッドは続けた。
「あなたは彼の助けがほしかった。今もそうでしょう。あなたは彼を必要としている」
「ですが…今に至るまで一度でも、声に出して彼の名を呼びましたか?」
アルフレッドもいなくなり、ブルースは病室に一人きりになった。
窓の外は、日が暮れかけている。
囁かな日の光でも、病室な大きな窓のおかげで、余さず見て取ることが出来た。
その窓から外を眺めながら、ブルースは囁いた。
「クラーク?」
高層ビルの隙間に夕日が沈んでいき、夜闇が覆い被さっていく外の光景を、ブルースはずっと見つめていた。
新世界
退院したブルースは再びケイブにた。
かつてクラークに破壊された品を焼いたのと同じ焼却炉に、自分の日記を放り込む。
クラークへの想いをしたためた日記が、燃えていく。
跡形もなく、消えていく。
(お前にとって最早世界など分に過ぎると言うわけか)
(いいだろう)
(ならば世界には、私のやり方で妥協してもらう他あるまい)
個人の感想です
誰も来ない窓の外を見つめ続けるブルースが切ないってレベルじゃなく辛い(とても辛い)
全編通して、ブルースからスーパーマンへの語りで構成されていて、普段お互いをどう思ってるのか、仲良しなのか険悪なのかさえわかりにくい二人の複雑な関係を、ブルース視点で読ませてくれるおもしろい話でした
なぜ世界が破壊されたのかとか敵が誰なのか、さらにブルースが世界を救う為に行ったことの詳しい内容とか知りたいので、もう少し他のフューチャーズエンドシリーズもいつか読みたいです。
スーパーマンの万能さと優しさに対し、バットマンは限界を知る者の冷静さと冷酷な判断力がある。その違いをバットマンは理解しているけど、スーパーマンは微妙に理解していない雰囲気があるっていうのがもう…至高かよ……としか
スーパーマンに決断できないことを、バットマンは決断できる。スーパーマンには出来ないからこそバットマンがやるっていう感じもして何か色々滾りますね
しかしそうまでして世界を救っても、ヒーロー仲間からも非難され、スーパーマンさえ失い……っていうオチがせつねえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人類を見捨てた見捨てたとやけに強調して、おまえは人類に必要なんだよとしつこく言うのも、本当にスーパーマンを必要としていたのはバットマン自身に他ならないんだろ!そうだろ!という、多分読み始めてから誰もが「はっきり言いなさいよ!」って思ってたことを、ずばりアルフが言ってくれて助かりました。さすがアルフ!俺たちにできないことをry
ブルースがどうしてぎりぎりまで「クラーク」と声に出して呼ばなかったのか。
はっきりとは書かれていませんが、アルフレッドの台詞からしても、ブルース自身の中で、「本当にクラークはいないし、いたとしても戻ってこないのだ」という現実から眼をそらしていたのではないかと勝手に思いました(感想文)
世界中の声を聞き取れるスーパーマンの能力をブルースは誰よりも理解しているのに、手紙や心の中で呼び続けるばかりだったのは「逃げ」だったのか……
とりあえず殴りにくるだけでもいいから、スーちゃん、一回帰ってきてあげて……
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