DC Nuclear Winter Special
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あらすじ
ブルースウェインの息子、ダミアンの短編が収録されているDC Nuclear Winter Special “Warmth”。
ダミアンは本編に関わる時点では基本的には13歳で描かれていますが、たまに成人してブルースからバットマンを引き継いだダミアンの物語が語られることがあります。
今回の物語はほぼ崩壊したゴッサムから始まります。どうもBatman Incorporated #5に描かれた、ジョーカーウィルスが蔓延し、市民がゾンビ化してディストピアとなったゴッサム問題を”解決”するためにアメリカ政府が核爆弾を落とした世界線のその後の話らしいです。アメリカ政府はいつもそうだ…
クリスマスの奇跡
アメリカ政府の手で核爆弾を落とされたゴッサムは荒れ果てていた。寒さが厳しく、いまだに町中で火の手が上がり、暗い空に淀んだ光を灯している。
多くの人間が死んだ。全ては自分の責任だと、ゴッサムに唯一残されたバットマン、ダミアン・ウェインは独白する。
最後のカレンダーが燃え尽きてから、日付の感覚すら失ったのに、今日が今年最も寒い日だということはわかる
父親の後継者として相応しい力、全てに立ち向かえる力と引き換えに悪魔に魂を売ったダミアン。
それにより不死となった彼にはいつも悪魔がつきまとい、心さえ凍らせていくが、彼は未だに温もりを求めずにはいられないのだった。
11歳の誕生日に、父さんが刀をくれた。ハンゾーブレード。俺はもう何本も刀を持っていたから、必要なかった。けど大切だった
火の向こうに浮かぶ父親の姿を見つめるダミアン、その背後を突如何者かに強襲される。
ダミアンの祖父、ラーズアルグールである。
ラーズもまた不死に近しい力を持つ存在だ。崩壊に瀕した世界の中で、彼もまた生きていたのだ。だがその姿はかつての力強さを失い、弱々しい。
年老いて、醜くやせ細った屍のような姿。
ダミアンに残された、唯一の家族。
ラーズは喚く。
世界の支配者となるはずだったダミアンが、世界を崩壊に導いたことを責める。
自分を狂人を見る目で見つめたブルースと、同じ目をしていると、ダミアンを詰る。
そして静かに、なぜ自分の夢を全て灰にしたのかと尋ねる。
殺してやれ。それが情けだ。
悪魔がダミアンに囁く。
確かに、かつての強さは見る影もなく、己の悲運だけを嘆く痛痛しい老人には死こそ救いかもしれない。
ダミアンには祖父を殺す方法がすぐに思い浮かぶ。
首、脊椎、頭。
今のダミアンなら、痛みも何も感じる隙もなく殺してやれるだろう。
しかし
「殺さない」
動かないダミアンの代わりに、ラーズがダミアンを激しく斬りつける。
ダミアンを蹴り倒し、ためらいなくその胸を貫く。
動かなくなったダミアンをラーズは呆然と見つめる。そして弱々しくつぶやく。
「なぜだ?なぜ私を殺してくれないんだ、ダミアン」
ラーズは殺されたいがために、孫の元にやってきたのだった。だがダミアンはこの哀れな老人に反撃ひとつしなかった。
なぜなら
「俺はダミアンじゃないからだ」
胸に刺さった剣を引き抜き、ダミアンが起き上がる。
「ダミアンなら、初撃の段階であんたを殺してた」
「俺は殺さない」
「俺はバットマンだ」
「メリークリスマス、お爺様」
孫の言葉に動揺を隠しきれないラーズが、プレゼントを持っていないと呟く。
しかしダミアンは微笑んだ。
荒廃した世界、ひどく寒い日、怒りを捨てて許すことを知ったダミアンは、唯一の肉親と隣り合って座りながら、柔らかな温もりを感じていた。
ダミアンは常に怒りと攻撃性に満ちた子供だった。
出自と育ちから、決して父のようなヒーローにはなれないと周囲に言われることも多く、時に自身の不安にも飲みこまれた。
※Batman: Incorporated#5
だがダミアンは常に努力していた。
より良き存在になろうと。父親に認められる存在になりたいと。
どうすればそのような男になれるのかを考え続けていた。
追い続ける父も兄弟も失ったダミアンは、全てが灰となった世界で、自分の運命に深く食い込み、長きに渡る怒りの元凶でもあった祖父に遭遇した。
そして証明したのだ。
祖父を殺さず、ある種の許しを与え、家族としてそばにいることで、心の底からなりたいと願っていた、
良きヒーロー、バットマンになれたことを。
感想のようなもの
・ハートフルすぎて泣いた
・もうほんとさ…ブルース本人からも「お前はロビンにもバットマンにもなれない」とか言われちゃったことのあるダミアンだからさ…こんなん泣くでしょ
・パパのこと大好きなダミアン〜〜〜〜好きだ〜〜〜〜〜
・ダミアンからパパへのクソデカ感情がすごすぎるのでブルースパパももう少しダミアンに答えてあげてほしい。答えてるとは思うけどもうちょっと頼む
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