わたしのなかみがこぼれ落ちないように「幽霊のような子」

こんにちは、サトウ@mukashime)です。

どうも最近身体がだるいですね。気圧のせいかな。ちゃんと毎日運動してるんですけどね。ラジオ体操を朝に一回(雑魚


昨日はノンフィクションだったので今日もノンフィクション。

「幽霊のような子 恐怖をかかえた少女の物語」です。

この子はまるで幽霊だ。八歳の少女ジェイディは周りが何をやっても、まったくの無反応。体を折るようにして深くかがめ、上目づかいに人を見上げる。ある日、彼女がまっすぐに立つ姿を偶然目撃し、トリイは必死で原因を探る。やがて、次々と予期せぬ反応を見せだした少女が明かしたのは、陰惨な性的虐待をくりかえす忌わしいカルト集団の存在だった!孤独と不安のなか、トリイは少女を救えるのか?衝撃と戦慄のノンフィクション。

「Book」データベースより


数多くの名作ノンフィクションを書いているトリイ・ヘイデンの一冊。

彼女は特殊な環境や精神に問題のある子供を専門に扱う教師であり、著作のほとんどは彼女が担当した子供のことを書いています。


この本の主役、8歳のジェイディもまた、不思議な子供でした。

トリイが担任になるまでは、学校では誰とも話さず、終始背中を丸めた奇妙な姿勢をしていました。

家では喋るという情報があったため、トリイは彼女が「選択制無言症」(話す能力はあるが、話そうとしない、もしくは精神的な理由で話せない)であると判断し、彼女に接します。

その甲斐あって、ジェイディはとても早い段階で、トリイに対しては話をするようになります。

しかし自由に会話をするようになったジェイディは、やがて妙に性的な匂いのする奇妙な行動を取り出します。

同級生の男の子の性器に噛みついたり、「ペニスをしゃぶるとお乳が出る」と得意げに話すジェイディに接し、トリイは彼女が性的虐待の被害者ではないかと疑い始めました。

そうした仮説を立てるトリイを尻目に、ジェイディはさらに現実とはとても信じ難いストーリーを、トリイにだけ語り出したのです。

それは悪魔的なカルトと性的虐待が混ざり合った残酷な儀式を少女たちに繰り返す集団の存在でした。

幼い少女の口から、自分の腹の上で引き裂かれた猫の血の温度、同い年の子供が隣で殺され、その血を飲まされた状況について語られる異様さに、トリイは混乱します。

これが映画やドラマであれば、少女を犠牲にするカルト集団が暴かれてめでたしめでたしとなりますが、これはノンフィクション。

教師であり心理学者でもあるトリイは、非常に難しい立場に立たされます。

一つは、ジェイディの話以外に、そのカルト集団の存在の確たる証拠がないこと。ジェイディは長い間、心理学的に奇妙な行動をとるという歴史があり、彼女が幻覚や妄想を伴う重度の精神疾患である可能性を完全に排除することが難しかったのです。

もう一つは、ジェイディの住む地域が非常に狭いコミュニティだったということ。奇妙な集団が頻繁にジェイディの家を行き来すれば、必ず人の目に止まるはずなのにそれがない。物的証拠もない。


そもそも両親は、その儀式が行われている時、どこにいるのか?もしや、カルト集団は、ジェイディが自分の心を守るために作り出した存在で、性的虐待を実際にしているのは両親なのか…?


もしも事を大きくしてジェイディを一時保護しても、何も見つからなければ、ジェイディは同じ環境に戻される。

そしてジェイディの話が妄想だったとすれば、彼女の精神疾患は非常に重度であると判断せざるを得なくなり、彼女は社会復帰がほとんど不可能な精神病院に入らなければいけなくなるかもしれない。そしてその判断は、トリイがしなければならない。

トリイは苦悩しながら、非常に難しい決断を、しかし慎重に行います。

あらゆる困難を乗り越え、ジェイディはどうなったのか?


トリイは作中で、ノンフィクションであるが故に、このような最後になって自分も欲求不満を感じていると述べていますが、わたしには十分なハッピーエンドに思えました。

思えば小学生の頃に表紙買いした一冊。(アイキャッチ画像が昔の表紙)

今なお、自分の中のノンフィクションNo.1の本です。

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この記事を書いた人

フィンランドに住みたい研究者かつフリーのWebデザイナーかつコーダー。
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