安寧な籠の中と危険な世界。どちらで生きるのが自由か?「被差別の食卓」

こんにちは、サトウ@mukashime)です。

進撃の巨人を最新話まで読む機会があり、「お前…変わっちまったな…」と好きな子が少し会わない間に大人になったような嬉しさと切なさと心細さを感じていました。

エレン…どうしちまったんだよ…そんな大きくなって…

進撃世界の謎が明かされて、明るい未来どころか辛い選択しか残されてない感マシマシの中、それでも前に進み続けるキャラクターたちの姿を見て、ふと思い出したのがこの「被差別の食卓」の中に収録されているブラジルの話でした。

大阪のある被差別部落では、そこでしか食べられない料理がある。あぶらかす、さいぼし……。一般地区の人々が見向きもしない余り物を食べやすいように工夫した独自の食文化である。その“むら”で生まれ育った著者は、やがて世界各地にある被差別の民が作り上げた食を味わうための旅に出た。フライドチキン、フェジョアーダ、ハリネズミ料理――。単に「おいしい」だけではすまされない“魂の料理”がそこにあった。

Amazonより

ブラジルにはいまだに「キロンボ」という黒人集落が存在します。

「キロンボ」は基本的に「町」から離れたジャングルや山岳地帯に形成されており、そこに住むのは奴隷身分から逃げ出してきた黒人たちです。

病院は何十キロも先にあり、まともな教育制度が整っていないため文字が読める人も少ない。部落同士で結婚することが多く、常に大家族で貧困に喘いでいる。お世辞にも良いとは言えない住環境。

しかし「キロンボ」は「黒人たちの楽園」と呼ばれています。

「キロンボ」にいれば、白人から暴力を受けることはなく、飢えもせず、家族に囲まれて、誇りをもって生きることができるからです。

しかし迫害や差別を受けてでも、退屈な「キロンボ」での暮らしから抜け出したいと願って、「町」へ出る若者もいるのだそう。

奴隷の身分からの「自由」を願って逃げ出した人たちの作った「黒人収容所」とも言われる「キロンボ」。

そこで変わらぬ安寧を得る人もいれば、新たな「自由」を求めて、「外の世界」へ出ていく人もいる。例え「外の世界」では白人から差別や暴力を受け、最低賃金で働かざるを得ないと分かっていても。

どちらの人こそが「自由」で「幸福」なのか?

答えはなかなか出ないでしょう。それこそ「差別が無くなればいい!」というだけの話ではあるのですが、現実問題、「それだけの話」を解決するのに何百年もかかっているのですから。

「進撃の巨人」世界は、正しく現実の歴史を映しています。だからこそ、今後の物語の展開で作者がどんな答えを出してくれるのかがとても気になっています。


この「被差別の食卓」はブラジルの他にも、アメリカのフライドチキンとかロマのハリネズミ料理とかいろいろ「へ~」と思う話がまとめられています。ハリネズミに犬顔と豚顔があって、豚顔の方がおいしいとか、一生使わずに終わりそうな豆知識なんかも手に入ります。

さらっとした文章で、分かりやすく歴史や料理についてまとめられていて、非常に読みやすいです。

が、所々で、微妙に筆者側の意識の持ちように「は?」ってなる部分もあるので、合う合わないはあると思います。(差別されるから牛を食べるのをやめた人が「今回に限って、頼まれたから作ります」と言ってくれたように書いているんですが、相手の貧困具合と、ちらつかされた謝礼を思うと、う~ん?となってしまう…とかそういう感じです)

なので誰しもにお勧め!とはならないんですが、興味のある方はちょっと覗いてみてください。

食べ物を通じて歴史に興味を持つ入口になるかもしれません。

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この記事を書いた人

フィンランドに住みたい研究者かつフリーのWebデザイナーかつコーダー。
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