音楽で世界に触れる「妻を帽子とまちがえた男」

こんにちは、サトウ@mukashime)です。

家人が肉を買ってくるというのでビールを買いに走りました。正しい行動だったと思います。欲に忠実な人間らしい。

今回は「妻を帽子とまちがえた男」です。

病気について語ること、それは人間について語ることだ―。妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。頭がオルゴールになった女性…。脳神経に障害をもち、不思議な症状があらわれる患者たち。正常な機能をこわされても、かれらは人間としてのアイデンティティをとりもどそうと生きている。心の質は少しも損なわれることがない。24人の患者たち一人一人の豊かな世界に深くふみこみ、世界の読書界に大きな衝撃をあたえた優れたメディカル・エッセイ。

「Book」データベースより


タイトルにもなっている「妻を帽子とまちがえる」男は、Pという優れた音楽教師です。

彼はタイトルの通り、妻を帽子と間違い、妻の頭をつかんで被ろうとしてしまう。彼は視覚的な認知の障害を持っていて、妻の顔と帽子という全く別の形をしてるものでも、その区別がつかない。

視覚を伴う想像力と空間認知も損なわれている。

バラを見せられても「約3センチある。ぐるぐると巻いて赤いもの。緑の線状のものがついている」とうんうん悩んでいる。

人に「においを嗅いでください」と言われて試してようやく「これはバラだ!早咲きのバラ!」と気づき、バラに関する歌を機嫌よく歌いだす。

彼の認知力は嗅覚など、視覚以外に大きく頼っている。


どうやって彼は日常生活を送り、音楽教師をしているのか。

著者は「音楽」が彼を支えているのだと信じていました。

視覚では自分の体も、妻の顔も正しく認知できないが、音楽によっては正しく世界を理解できている。

楽しいときに歌い、ケーキをむしゃむしゃ食べながらハミングする。


この本には、Pと同じく奇妙な病状を示しながらも、その人生をせいいっぱい生きる人たちの話が載っています。

患者に対する誠実さと愛が著者の語り口に滲む、素敵なメディカル・ノンフィクションです。

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この記事を書いた人

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