憎悪を消すことはできるのか?「檻のなかの子」

こんにちは、サトウ@mukashime)です。

馬刺しが食べたい。


今日は「檻のなかの子ー憎悪にとらわれた少年の物語」です。

8年間、だれとも口をきかず、日中ずっと児童養護施設の机の下でおびえている15歳の恐怖症の少年ケヴィン。ひとたび恐怖心が爆発すると、猛獣のように暴れまわり、周囲や自分を傷つける。180センチほどもあるこの少年を、セラピストのトリイは心底、恐ろしいと感じることがあった。ふたりで机の下にもぐっての長い努力のすえ、ついにケヴィンは言葉を発し、あらゆる症状が快方に向かった。が、ある日、ケヴィンが描いた一枚の絵を見てトリイは仰天した。それはあまりに精密で写真のようにリアルだった―男が腹を裂かれ、路上に腸をぶちまけられ、死肉をカラスがついばんでいる…彼が心の奥に封じ込めていた激しい憎悪が解き放たれたのだ。そして、彼自身と妹たちが義父から受けてきた、おぞましい虐待の事実がひとつずつ明らかになっていく。一時はすっかり治ったように見え、トリイの手をはなれたケヴィンだったが、その後、傷害事件を起こし、精神病院や感化院へと送られてしまう。怒りと憎しみの虜となった少年に、救いの道はないのか。

「Book」データベースより


以前書いた「幽霊のような子」と同じトリイ・ヘイデンの著作です。

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トリイの他の本に比べても、「檻のなかの子」には特別リアルな困惑と葛藤、そして幸運が描かれているように思います。


自分よりもずっと小さく10歳以下の子供を扱うことが多かったトリイが、「檻のなかの子」では180センチを超えるティーンエイジャー、ケヴィンの担当となり戸惑いながらも接していく姿。


目の前で妹を殺された怒りを内にため込んだまま、今にも爆発寸前のケヴィンの不安定さ。


綱渡りのような緊張感を抱きながらも、トリイとケヴィンは互いに強く関わり合い、新しい世界へと進んでいく。


本によっては、ノンフィクションゆえ曖昧な終わり方をすることもあるトリイの著作の中でも、この本ははっきりとしたハッピーエンドを見せてくれます。


トリイの公式ホームページで、現在も幸せにしているケヴィンのメッセージが読めるのも、その印象を強めてくれます。

彼は結婚して、妻と息子がいるとのこと。明確な「現在」はわかりませんが、幸せであることを祈っています。

(ちなみに「檻のなかの子」のジェイディは、ホームページへのメッセージの寄稿は辞退したようです。あの頃のことは今も彼女は上手く説明できないのだそう)



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