こんにちは、サトウ(@mukashime)です。
最近は素晴らしい俳優さんが亡くなったり、いつまでたっても旅行に行き難かったり、なにかずっと、はっきりと言葉にしがたいもやもやが続いています。
ひとつひとつは無関係なのに、全部がどさっと圧し掛かる感覚。
そんな現実から離れてほっと一息つきたい。そんな気持ちが強いのか、読む漫画も、見る映画も、おいしいものを食べながら心穏やかに楽しめるようなものを選びがち。
そんな中、待ちに待っていたスケラッコさんの新作「バー・オクトパス」が発売されました。
静かな青い海――。
Amazonより
色とりどりの海藻やサンゴの奥に、ひっそりと佇む小さな酒場「バー・オクトパス」。
バーテンダーは、8本の足を自由自在に操り、カクテルを作るタコのマスター。人見知りの人魚さん・関西弁のぐじさん・おしゃべりなチンアナゴさん・
コワ~イ顔したサメ軍団・警察に追われる謎のウミガメさんなど、
今夜も訪れるのは、個性豊かなお客様たち。おいしいお酒と、心地良い音楽が流れる空間で、至福のひとときを…。
もうこのすっきりとした海色の表紙から大好きです。本棚に持っているだけで幸せになれる。
スケラッコさんの優しいタッチの絵がもともと好き。その絵で紡がれる物語がまた最高に、心を落ち着かせてくれます。
ストーリーは人見知りの人魚さんを中心に進みます。
この人魚さんが持つ葛藤だったり、心情だったりが、同じタイプの人にはめちゃくちゃ染みると思います…。
同窓会に行きたくなかったり。出会いを求めて(※求めてない)慣れないイベントに出て疲れ切ったり。明るくていい子な昔の同級生に会うんだけど、どうも苦手意識は抜けなかったり。
人魚さんの疎外感は、さりげなく描かれるワンシーンや、ちょっとした台詞から十分伝わってきます。
周りは実在する魚で、同じような種類の仲間が何匹もいます。
でも人魚さんの場合は子供の頃も、大人になってからも…偶然出会ったもう人魚の男の子一人(一匹?)以外には出てきません。
ここでは詳しく書きませんが、同級生の明るい魚が一人でいる人魚さんを気遣って、たぶん完全善意で言った台詞もなんかすごく「あ”~~~~~~」って感じなのがすごくリアルです…。
でも特にその種族の孤独とかが明言されてるわけじゃないんです。
匂わせる程度に描かれていて、そういう状況にあって、どう思うか。
周りと自分はどこか違う。馴染めないと感じてしまうのでは。
いや、やっぱりこの人魚さんの性格かも?
もう一人の人魚君はネアカっぽいし。
でも人魚君も人魚さんに「どこか自分と似てる」と言って気に掛けるのは、寂しいからでは?
そういうのをこちらの想像に任せて、押し付けない優しさが、このお話の全体に漂っています。
考えたいときは深く考えさせられますが、考えなくても、ただお酒おいしそ~とか、マスターが可愛い~とか、ふわふわ浸ることができる一冊です。
現実に会ったら、ちょっと苦手だな~というタイプの人(魚?)も描かれています。
バーで一人の女の子にしつこく話しかける団体さん。派手なイベントで出会い、連絡先の交換をぐいぐい迫るコミュ強。などなど。
でもその描き方がちょっとコミカルで、どれかのタイプを過度に誇張して悪く描かれたりはしないです。
スケラッコさんのその描き方を見て、なんだか何にでもイライラしてもやもやしていた心が、ちょっと楽になったりするのです。
いろんなタイプの人(魚?)がいて、一つのバーに集まって、好きな時間を過ごす。それだけなのに、それがすごくいいです。
あとめっちゃ酒が飲みたくなる。ディタ買ってくるかってちょっと思った(大瓶)
マスターの漬けた梅酒、飲みたいね~(こっそり味見してるマスターの顔がまたいいんだ)
綺麗でおいしいカクテルのように、疲れた心にすっと染み入る素敵な本です。
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