学んでも学んでも難しい「日本語の作文技術」ー校正のおしごとー

こんにちは、サトウ@mukashime)です。

仕事で論文や報告書の添削や校正をするのに加え、最近ではココナラのほうでも小説の感想校正のサービスを提供させていただいております。

(ここでいう「校正」とは文章の誤りや違和感を指摘することで、原本とのすり合わせの意味ではありません)


最初、ココナラのほうでは、小説を拝読し、キャラクター描写や話の展開、構成などいくつかの方面から感想を書かせていただき、作者さんから事前に頂いたご質問に答えるという流れでした。


ですが、事前に頂くご質問などで特に多かったのが「説明しすぎて文章が固くないか?」「この表現できちんと読者に伝わるか?」「説明が少なすぎて展開が唐突すぎないか?」というような、文章そのものに関するものが多いことに気づき、途中から校正メインのコースをサービス内容に追加しました。


するとその後、9割近い方が校正メインのコースを選んでくださいました。

そして今のところ全員が、好意的かつ前向きに受け止めてくれました。


これはちょっとびっくりしましたし、なおかつ、とても嬉しいことです。


なぜなら、校正となるとどうしても何かしらの指摘や問題の提起となってしまうので、仕事での経験上、嫌な人はめちゃくちゃ嫌がるからです(仕事だと本人は嫌だけど上司に言われてしぶしぶ…みたいな人もたくさんなので…)


ココナラの依頼主の方たちは、私が送った感想や校正を読み、ご自身で咀嚼してきちんと答えを出された旨も教えて下さるので、こちらとしてもやりがいを感じられ、本当に有難いことです。

目次


ココナラでしているのはどんな校正なのか?


実際、ココナラで校正と言ってどんなことを伝えているのか。(仕事の方は論文や報告書がほとんどなのでやっぱり勝手が違います)

依頼主の文章と校正内容は明かせないので、よくご指摘させていただいている内容を列挙してみました。

句読点、句点

個人の文章のリズムに深くかかわる部分なので、基本はあまり変更を促すことはしません。ただ、下記の文章のように

太郎は背後から花子の肩にトントンと叩こうと手をあげたが花子は太郎の存在に気づかずにその場からすたすたと立ち去ってしまったので太郎の手はただそこに浮いただけになってしまった。

例文1

とても長くて誤解を招きやすい、句読点や句点を添えることで解決するような文章には

太郎は背後から花子の肩をトントンと叩くため手をあげた。しかし花子は太郎の存在に気づかず、その場からすたすたと立ち去ってしまった。おかげで太郎の上げた手は、ただそこに浮いただけになってしまった。

例文1の書き換え案

このような書き換え案を添えてお知らせします。しかし自分で作った例とはいえ酷すぎる文だな

段落

これもあまり触れません。が、文章全体のリズムに迷いがあるという方や、段落のルールに不安があると事前にお知らせくださった方には、積極的にお知らせします。また、明らかに話題が変わったのにひとまとめになっている場合にもお知らせしています。



この句読点と段落、それから修飾の順番については「日本語の作文技術」を規範にしています。何か基準がないと、校正と言うより、ただの自分の好みのリズムや句読点の打ち方になってしまいそうで怖いので。

句読点については

必要最小限のテンだけを打つ.

長い修飾語が二つ以上あるとき,その境界にテンを打つ.

語順が,修飾語の語順の原則に照らして逆順の場合にテンを打つ.

強調のために,テンを打つ.

重文の境目にテンを打つ.

日本語の作文技術より

修飾については

節(一個以上の述語を含む複文)を先にして,句(述語を含まない文節)を後にする.例:「速く止まらずに走る」ではなく「止まらずに速く走る」とする.

長い修飾語ほど先にして,短いほど後にする.例:「明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した.」ではなく,「この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した.」とする.

大状況・重要内容ほど先にする.

親和度(なじみ)の強弱により配置転換する.

日本語の作文技術より

などですね。

「日本語の作文技術」には小説の書き方は載っていませんが、このような細かい作文のルールが、例文と共にたくさん記されています。

少し古い本なのと、著者のあくが少々強いので、読みやすい本とは言えませんが、文章の書き方に迷ったときにはよく引っ張り出しています。私にとっては教科書のようなものです。

表現の追加

事前に「表現できているか、表現が十分か不安」「展開に唐突感がないか不安」というようなお話があった場合は、追加案を提案します。

例えば下記のような単調な文章

女は美しかったので、男は見惚れた。女は立ち去った。男はその背を見ているしかなかった

例文2

これを前後の展開などともすり合わせながら

女は見惚れるほど美しかった。歩を進めるたびに、全身から光を発するようだった。あまりのまばゆさに当てられた男は、ただただ呆然とその背を見送るしかなかった。

例文2の書き換え案

のように追加表現を提案します。例文が酷すぎる

展開案

表現の追加と似ています。いくつか文章を付け足して、自然な展開ができるよう別案を出します。

主語との関係

主語とその後の文章の関係がずれていたり、違和感がある時は、お知らせします。

例えば

曲がり角に現れた幽霊を子供たちは見て腰を抜かした。

例文3

別に上記でも間違いはありませんが、これをもう少しわかりやすくなるよう

曲がり角に現れた幽霊を見て子供たちは腰を抜かした。

例文3の書き換え案

のように別案を出したりします。例文がry

視点

いわゆる「一人称」「三人称一次元視点」「神視点」です。

例えば書き出しが「三人称一次元視点」なのに途中で「神視点」になっているような場合はお知らせします。

ですがこれは(特に「三人称一次元視点」と「神視点」は)あまり厳密に区別できるものでもないので、小説全体を読んで気になるところだけお知らせする程度です。

最初から「視点に不安がある」という方には、「三人称一次元視点」と「神視点」の書き分け案などもお知らせします。

前後の文章

意外と文章を入れ替えるだけで、キャラクターの動きがスムーズになる場合もあり、そういう時はお知らせしています。

例えば

「パソコン使わせてよ」妹にそう言われて、僕は椅子から立ち上がった。妹が嬉しそうにそこへ座る。「いいよ」

例文4

例文が酷すぎて状況が分かりにくいのですが、本当はこの文章は以下のように言いたいのです。

「パソコン使わせてよ」妹にそう言われて、「いいよ」と僕は返した。

僕は椅子から立ちあがった。妹が嬉しそうにそこへ座る。

例文4の書き換え案

こうやって、書き換え案を提案します。

終わりに


このほかにも、複数人の会話で誰が誰の台詞を言っているのかわかりにくい部分や、誰の心情かわかりにくい部分など、色々とお知らせさせていただくことがあります。

ココナラではその人の一番気になっている部分を重点的に見ておりますので、事前に言ってもらえると本当に助かります。仕事でもそうしてほしい


今回あげた例文はどれも最悪すぎて酷いとすぐわかるものですが、意外と小説を書いていると、自分では気が付かないうちにこういった傾向の文章を書いてしまいがちです。


自分の脳内にはすでに大体の内容が入っているので、多少の違和感に自分で気づくのは難しいのです。

だからこそ誰かに読んでもらい、違和感を指摘してもらうのはとてもいい学びになります。小説ではないですが、私も報告書などをよく校正してもらってました。

私も上記の本や仕事の中でまだまだ勉強中ですが、今後もいろんな分野でそういうお手伝いが、多少なりでもできれば嬉しいです。

現在、ココナラで提供している校正サービスはこちらになります。

あなたの文章を褒めて、相談にのり、一緒に校正します 文章を書いてて気になるところを一緒に解決します!

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この記事を書いた人

フィンランドに住みたい研究者かつフリーのWebデザイナーかつコーダー。
WordPressのカスタマイズやLP作成のご相談お受けします。
ココナラでは「鴨なんばん」名義で小説作成や翻訳のちょっとしたお仕事も掲載中。

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